二 青年の教育過程の内容について
 青年の教育過程の内容は一九九三(平成五)年一二月三日付原告の準備書面(25)に主張したとおりである。それ以来すでに七年以上の月日が経過しており、統一協会の教育過程が違法であると主張しているこの訴訟が結審するという段階に至っているのに、被告は原告が主張した教育過程の内容について、一言も反論をしない。
 社会的には、前記準備書面と全く同じ内容の書籍が同じ頃発行されている(統一協会 マインド・コントロールのすべて・甲第四七四号証)。その本の末尾には統一協会について「人の心を操作した悪魔のようなこの組織」とまで表現している。そこまで批判されている統一協会にとっては当然黙っていられないであろう。ところが、その本に対する批判も全くされていない。
 一九九六年に株式会社世界日報社から発行された「『霊感商法』の真相」(乙ハ第二五号証)には「例えば北海道の郷路征記弁護士は、・・・・著書の『統一協会マインド・コントロールのすべて』の中で『親の行為は刑法上監禁罪にあたるものではない。刑法三五条の正当行為として、その行為の違法性を阻却されるのである』(二五三ページ)などと言って、監禁を正当化している・・・。」という記載がある。これがどうも統一協会側で前記書籍について触れた唯一のものである。しかし、その批判の内容は、統一協会の教育過程について分析した前記書籍の内容に対する批判ではない。
 要するに、統一協会は原告の主張に対して反論することができないのであろう。ということは、原告の主張する事実が、統一協会の教育過程として行われているということである。
 したがって、最終準備書面では、統一協会の青年の教育過程の内容については前記の準備書面を援用する。

三 壮婦の教育過程の内容について
 統一協会の壮婦に対する教育過程は、最終準備書面二の公序良俗違反論の「罪の清算のための献金・手法は霊感商法」の部分(右準備書面七八頁以下)で、献金を獲得するのも統一協会の商法であるという視点で述べた。ここでは壮婦の教育過程を、時間の順序にしたがって、特徴的なことを述べることにする。
 壮婦の教育過程で用いられている心理操作の手法については、青年の教育過程とともにこの準備書面の後段で詳述する。

1 新規チケット
 ビデオセンターの受講を決定させる「鑑定」を受けさせるために、鑑定チケットを個別に訪問して販売する活動である。新規チケットを有料にしているのは、「鑑定所」に来る約束をキャンセルさせないように、「お金も払ったんだから」という心理的強制を働かせるためである。承諾誘導の技術のうち、コミットメントの利用である。
 その売り方は霊感商法の際の印鑑販売のやり方そのままである。

2 鑑定
 鑑定は鑑定所で行う。札幌北地区の場合は羅針盤であった。鑑定は姓名判断や簡易な家系図の判断でゲストに恐怖を与えて、ビデオ受講を決定させるために行う。ビデオ受講決定のことをコース決定という。

3 初級コース
 初級コースは鑑定所で行われる。札幌北地区の場合は羅針盤である。内容はビデオによる学習と統一協会員によるその後の和動である。
 見るビデオの内容は人によって変わる場合があるが原則的には次のとおりである。
 ビデオを見せる目的は、因縁と霊界によって恐怖を与えることである。

(一) 受講内容

甲第三七三号証 原告Q受講ノート 一頁〜一一頁
第一章 夫婦のあり方
第二章 幸福について
第三章 霊界と因縁
講演(家系、霊界)
クリスマスキャロル
第五章 真の家庭のあり方
第四章 因縁清算の道

甲第四五七号証 エーデルワイス内写真
壁に貼られている張り紙によると、初級コースで見せるのは、桜田講師のA一〜五のビデオである。

乙ハ第一四四号証 被告証人J 陳述書 四頁
 勉強は羅針盤でビデオで霊界のこと等を学び、七、八回通ってから家系図を見てくださる先生がいると言われエーデルワイスに通うようになりました。善の条件を積むのが良いと言われて夫が会社に出勤するときに玄関でキスで見送ることにしました。

4 中級コースにつなげるその他の方法

甲第三五九号証 原告L受講ノート 四三頁
 新規チケットから初級コースを経て中級コースという道以外に、物販→ハガキ→訪問→ブルー展→アフターから中級コースへという道と、知人友人→婦人教養講座→初級ビデオをみせて、中級コースという道が用意されている。
 物販を通じて伝道する道が用意されていることが統一協会の特徴を表している。
 この講義ビデオの題名が「伝道」である(同号証四〇頁)。

被告証人P 証人調書 五九頁
甲第三五九号証を示す
四〇ページを示す。これ原告の方の講義ノートなんですけどね。伝道についてと題するビデオですが、この方も西区の成和カルチャーセンターで、トレーニングを受けてるんですが、そのトレーニングの中で、伝道についての講義があることは分かりますね。
はい。
その講義の延長の四三ぺ−ジ一番下を見てください。知人、友人を介してチケットを一〇〇〇円で買って婦人教養講座、それから一万二〇〇○円でビデオ見て、それからエーデルワイスで中級コースのビデオ見て、文化センターで、成和カルチャーセンターで勉強するというのが一つのコースとして記載されてますね。
はい。
あなたが原告Sを誘ったのは、今説明した婦人教養講座のコースですね。
はい、そうです。
このノートによれば、伝道についてということの中で説明されてるんですよ。
はい。

5 中級コース
 中級コースはビデオセンターに場所を変えて行われる。札幌北地区の場合はエーデルワイスである。中級コースの目的は、ゲストに罪意識を持たせることである。そのためのビデオや一般映画が用意されている。カウンセリングでは自犯罪を聞き出す。壮婦の場合、当然のことではあるが青年に比較して性に関わっての罪意識を持たせられることが多い。そのような場合の罪意識は強烈なものとされてしまい、必死になって救いの道を求める状態になる。
 中級コース決定の鑑定は家系図判断が主体である。

(一) 受講内容

甲第三七三号証 原告Q受講ノート 一二頁〜三五頁

同甲第三七四号証一頁〜一七頁まで
第一章 愛による家庭の崩壊
第二章 心のできあがる過程
第三章 不幸の原因
第四章 生命に対する尊厳性
第五章 罪の清算と救い
第六章 神の創造と人生の目的
氷点
第一章 創造原理
第一章 創造原理
第二章 堕落論
神と私達の関係
因縁と罪
第三章 終末論
第四章 メシヤ論
第五章 復活論
第六章 復帰原理
第六章 復帰原理
天地創造
KING OF KING
歴史の同時性

甲第四五七号証 エーデルワイス内写真
中級コースで見せられるビデオは桜田講師のB一〜B六と青年のビデオセンターでも使用されている倉原の統一原理講義ビデオである。

乙ハ第一七九号証 B一〜B六
中級コースの最初に見せる一連のビデオの内容である。これらのビデオとその後の和動で、ゲストに罪意識を与えることを目標にしている。
その内容は後述する。
映画氷点もまさしくその目的のためである。

被告証人P 証人調書 六一頁
甲第四五七号証を示す
これエーデルワイスのスタッフルームの中ですね。
はい、そうです。
この壁の真ん中に赤い時計がありますよね。
はい。
その横にK一、K二、K三から始まって、K一四まで記載がありますね。これなんですか。
これはビデオの内容です。
これは統一原理を解説した倉原さんのビデオのことですね。
はい、そうです。それはずうっと学んでいく人に対しての。
その隣、桜田講師のB一からB六までとあるんですが、これは中級コースのビデオですね。
中級から入るのかもしれませんね。
その隣A一からA五まであるんですが、これも桜田講師ですが、これは、いわゆる初級コースですね。
ですけど、ほとんど中級に入ってから見せるビデオですよね。ほとんど婦人教養講座で来た方は、ほとんのカルチャー的な、カルチャーというか一般教養、そういうような内容でお見せしてますから。ですから、これはずうっと後の話ですね。
原告Sなんか見ても、三日か四日ぐらい後からこのAの初級コースをずっと見てますね。それからすぐBを見てます。
桜田講師のですか。
そう。
うーん。
このスタッフルームにこういつたビデオのリストが載ってるというのは、これを順番に見せてくエーデルワイスだということじゃないんですか。
このビデオというか、興味を持った方に対して、要するに学んでいきたいという、原告Sさんのように一生懸命やって学んでいきたいという人には、この順番に見せていったと思いますけど。興味のない方は途中でやめてますので。
だから興味のあった方がずっと見てくと、統一原理の勉強に至るようになるわけですね。
・・。

6 上級コース
 上級コースの目的は文鮮明をメシアとして受け入れさせることと献金させることである。場所が札幌北地区の場合は成和カルチャーセンターに変わる。ビデオ受講ではなく、講師による直接の講義となる。
 復帰摂理思想という講義を通して、自分の過去の罪の清算のため、先祖と子孫のためにという名目で献金が強要される。

(一) 受講内容

甲第三七四号証 原告Q受講ノート 二〇頁〜三〇頁

甲第三七五号証 原告Q受講ノート 一頁〜二九頁
オリエンテーション
創造原理
堕落論、復帰原理
復帰原理、同時性
イエスを中心とする復帰摂理
摂理的同時性
カウンセリング (甲第三七四号証 二六頁にメモ)
復活論
イエス路程
再臨論
主の路程
主の路程
救いと私たち
復帰摂理思想
文鮮明の歩み四
文鮮明の歩み二

7 幹部トレーニング
 物売りの実践のための準備の講義である。

(一) 受講内容

甲第三七五号証 原告Q受講ノート 三一頁〜五八頁

甲第三七六号証 原告Q受講ノート 一頁〜五二頁
第二九期 幹部トレーニング:オリエンテーション
創造原理
堕落論
復帰原理
信仰生活講座
聖地について
統一運動の展開
勝共思想
現代の摂理
主人復帰講座
間接侵略の危機
勝共とは (国際勝共連合 事務局長)
勝共講座(T)
勝共講座(V)
現代の摂理(T)
現代の摂理(U)
現代の摂理(U)
信仰生活講座
伝道学
礼典学
反対運動
主の路程
(トレーニング三ヶ月目開始)
実践の為の講座
摂理について
担当者教育(CB展)
伝道について
公的責任分担と理想家庭実現
神について(T)
罪について(T)
罪について(U)
特別講義 「み旨と私」
(天地正教と統一協会と兄弟)
高麗人参について
信仰生活講座
記念日等について
万物復帰の意義と価値
呉服展について
NF思想
ビデオ礼拝「神に喜ばれる生活」
物販について(サウナ、人参、ミネクール等)
管区長訪韓帰国報告会
勝共講座等
地域長のみ言、マナの飲み方
「子女の日」説教
主人復帰講座

8 トレーニングが終わった後
 一ヶ月間訓練のためのお茶売りが行われる。

9 新規隊
 新規チケットを販売していく部隊である。被害者が加害者に転化したわけである。

四 宗教団体への勧誘過程として特別の保護をすべきでない。
 統一協会の勧誘過程で最大の問題は、ゲストが勧誘主体を明らかにされても、その組織を去ることができない時期まで、統一協会であることも、宗教団体であることも否定して、虚偽を貫くことである。
 統一協会がそのような勧誘方法を取っているのは、統一協会と表示して勧誘したのでは、入る人がいないからである。その理由は、統一協会が宗教団体の装いをしながら、霊感商法などの商行為を行っていることが知られているからである。自らの行為によって発生した当然の批判をかわして、その商行為に人を誘い込むために、自分の正体を隠すのである。
 したがって、統一協会の教育過程について、宗教団体であることを明らかにしていないのだから、宗教団体活動としての特別な保護を与えるべきではない。

乙ハ第九三号証 被告証人E 陳述書 二二頁〜
 統一教会についての世間の風評が、残念ながらあまりにも悪いため、宗教とか統一教会、或いは統一原理の名前を最初に出すと対話することさえも拒絶され、学んでみようという気持ちを持ってもらえないことがあります。
・・・・・・・・
 そのような条件的な拒絶反応をさけて、色眼鏡なしで私たちの内容に触れてもらい、その上で内容を判断してもらう、というのが、最初から統一協会の名前などを出さないことの理由です。

乙ハ第一号証 西田論文 一三四頁
 ビデオセンターに通って学習することにした動機は、自己高揚動機、人間の価値、自分の人生の目的や使命がわかると思ったからとか、自分の悪いところや欠点を変えることが出来ると思ったからとか、生きがいが見つかると思ったからとか。認知動機、何だか面白そうなためになるないような気がしたから等が高い。

乙ハ第一号証 西田論文 一三四頁
 ビデオセンターに出向いた理由の項目に因子分析を行った。平均値が示すように、一般教養が身につくといった期待性が高く、宗教へ入信しようという理由ではなかったといえる。そしてこの高い期待性は、伝道者の誠意や賛美などの手厚い対応に支えられていると解釈できよう。なぜなら、伝道者の手厚い対応は、対人魅力を獲得し、被伝道者をポジティブな情緒状態へと導く。その結果、伝道者に対して関心が高まり、好奇心を生じさせることになるからと思われる。


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札幌青春を返せ訴訟・最終準備書面
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