第一 組織論
一 はじめに

 最終準備書面の冒頭に、全国しあわせサークル協議会(以下「連絡協議会」という)と被告統一協会(以下単に「被告」と表示する)が同一組織の公然部分と非公然部分のことである事を論証する。
 連絡協議会=被告であることが論証されれば、連絡協議会自体が霊感商法などの商行為を行っていることを自認していることから、その行為が被告の行為であることが明確になり、被告の責任を直接問うことができることになる。

二 全国しあわせサークル連絡協議会
 連絡協議会は昭和五七年八月設立され、大理石の壺や多宝塔を、それに霊的力があるといって販売していた。その存在は、本件訴訟が提起されてから何年も経過した後に、被告から主張されるようになった。
 その活動内容は概ね次の通りである。

1 活動内容

乙ハ第二四号証の一 平成七年九月一一日 小柳定夫証人調書 二五頁
 連絡協議会でいろいろな売上目標をたてまして、ハッピーワールド、販社特約店等々の商品を供給するという関係でございました。

乙ハ第二三号証  小柳定夫 陳述書 三六頁
 中央本部では、営業・販売促進のための連絡業務と共に顧客に対する伝道・教育に対する情報交換、統計、集計などの業務を行った。全国をブロック単位でまとめることにし、ブロックは販社の販売エリアとしました。

平成一〇年六月一二日 小柳定夫 反対尋問 五二頁
 連絡協議会は、トップの指揮・統制が行き届いている組織であった。

乙ハ第二五号証 『霊感商法の真相』 一七頁
 販売のための組織を私がつくり、整備し指揮していた。それが全国しあわせサークル連絡協議会です。

乙ハ第二五号証 『霊感商法の真相』 二五頁
 昭和五七年四月に、全国しあわせ会が結成。青年顧客の多い東京では、一般の人々に直接しあわせ会を紹介するゲスト獲得のための組織になっていった。
 昭和五七年八月 全国しあわせサークル協議会を結成。

乙ハ第二五号証 『霊感商法の真相』 三〇頁
 全国的規模で人事を統括する組織が連絡協議会である。

三 団体性
 全国しあわせサークル連絡協議会は、構成員の宗教的信念の同一性・特にメシアである文鮮明への絶対的帰依とカイン・アベルの教えの呪縛によって、きわめて強固な組織的統一と行動の統制を実現している。団体内部には多段階に及ぶ秩序だった階層構造が存在し、構成員の異動に関わらず団体としての同一性を維持している。単に信者が自主的に集合したというものではない。

1 階層構造
乙ハ第八五号証
 連絡協議会の組織構造が図示されている。
 右の組織の階層構造の中で記載されていないのが統一協会の教祖文鮮明の存在である。

2 文鮮明
 連絡協議会が設立される以前、被告が自認するとおり、宗教団体である被告が経済活動も政治活動も宗教活動と一体のものとして行っていた。その頃から被告に対しては教祖である文鮮明から直接の指示が行われていた。連絡協議会が設立されて以後、連絡協議会に対して文鮮明の指示・命令が行われ、行動の目標が提示されていた。

(一) 連絡協議会設立前、経済組織などへの指示

甲第四八号証 ○○○○供述調書
 内容は、人事異動等で、後は書いてあるとおりでありますが、大先生(韓国の居られる神霊協会の教祖で名前は文鮮明であります)の指示を石井氏が受けて日本の会長に伝えたようです。何故、韓国の大先生の指示を受けるかと申しますと、いろんな問題が起きた場合、どうしても解決しないときには大先生の指示を仰ぐことになっているからであります。

甲第四八号証 ○○○○供述調書
番号五の内容は、
昭和四六年九月三〇日、第三回目渡韓したその日に、韓国の協会で大先生、文鮮明氏と会い、前述した問題解決の指示、また、日本の協会に対する助言、更には韓国の教会本部の計画等を「大先生のお話」として書いたのです。
@からCまで書いておりますことは私が当時就任しておりました幸世商事株式会社の人事について問題があったので幸世商事の立場でお伺いし指示を仰いだのです。

甲第四八号証 ○○○○供述調書
番号六の内容は、
前葉の続きであります。Gは大先生の命令は絶対的なものであるということは、協会員全員が知っておりますが、再確認してもらうためにかいたのです。このことは、私が帰国後、小山田会長代理に伝えた結果、@ABCFは実現しております。このことは久保木会長に伝えるべきでしたが会長が不在でしたので会長代理に伝えたのです。

(二) 連絡協議会に対する文鮮明の指示

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 六二頁
古田さんは毎月直接文鮮明氏に会いに行くんですか。
はい、そうです。
鮮明氏から直接ご指示をいただいて、それをブロック長会議でブロックの責任者に伝えると、きわめて重要な役割になるわけですね。
はい、そうです。
それは宗教法人統一協会とはどういう関係になるんですか。
統一協会の活動そのものであります。
信者たちが勝手にやっている活動ではないんですか。
違います。
どうしてそう言えるんですか。
経済活動は統一協会の取り組んでいます活動の第一目的になっていますから。
古田さんは久保木さんとはどういう関係になるんですかね。
私のいた当時は久保木会長は日本統一協会の表側の看板と言ったらいいでしょうか、講演とか、そのようなものに出てまいりますが、実際上総括責任者としては古田コマンダーが実質指揮をしておりました。
そうすると、形式上は久保木さんのほうが対外的に上ですよね。
はい。
実質的な活動を仕切っているのは。
古田コマンダーです。統一協会には表と裏という考えがよく出て来ますが、表の顔が久保木会長、裏の実質的な指示者が古田コマンダーということになります。

甲第五三号証 ○○○○○尋問調書 二二二項〜
TV一〇〇という言葉を聞いたことありますか。
はい、よく聞きました。
だれが言いだしたと聞いてますか。
文鮮明が言った言葉です。
どういう意味ですか。
一月で日本全体で一〇〇億円の献金をすると、日本の経済が変わって罪深い日本から多くの人が救われる、だから一〇〇億頑張りなさいという話です。
実際に達成したことあるんですか。
はい、あります。
いつ。
六一年の一一月と一二月に達成しました。
なぜ分かりますか。
全国の売上や毎日の売上などがファックスを通して流れてくるので、それで分かりました。

甲A第一六号証 ○○○○○ 証人調書 一三頁
その下に「TV一〇〇はどんなことをしても勝利するように」と書いてありますが、文鮮明がこのように言ったということですか。
そうです。
あなたは文鮮明から、直接聞いたんじゃないんでしょう。
この時は聞いていません。
TV一〇〇というのは、どういうことですか。
一〇〇億を復帰しなさいということでした。
だれから、文鮮明がこのように言っていると聞いたんですか。
○○ブロック長です。
場所はどこでお聞きになったんですか。
展示会場や、日の出ハイツに来られたんで、その度に聞きました。

甲A第一六号証 ○○○○○ 証人調書 一六頁
古田コマンダは国際電話を通して、文鮮明より、時々ノルマを聞くらしいんです。それでトーカー団というのは、ブロック長の懐刀と言われて、特別なポジションにおかれていました。それでブロック長はトーカー団に対して、いついつまでにこれだけのお金を作って欲しいとおっしゃるんですね。それを聞いたとブロック長が伝えていました。

甲A第一六号証 ○○○○○ 証人調書 一〇〇頁
ノルマは、文鮮明氏が直接課したものなのか、文鮮明氏がそういうノルマを課したと称して、幹部の方が叱咤激励したのか、その区別はどうですか。
私が日本にいるときは、直接のアベルとしか接することができませんから、それは何とも言えません。しかし、文先生がおっしゃっただろうと信じてやってきました。ただ、韓国に行って、私は文先生より先程も話しましたけど、今後の世界日報の摂理において、これは何としても勝利しなければならない日本の使命は、やはりエバ国家であるから、やはり万物お金を投入しなければならないということを聞きましたので、そのときは何の矛盾もなくまた頑張らなければいけないという気持ちでしたけど。
結論としてどうなんですか。
結局、文先生が言っていると思いました。

乙ハ第二八号証の二 平成六年七月四日 ○○○○ 証人調書 一〇五頁
では、文鮮明さんの話しであるということで話したんじゃないですか。
ですから、先回の主尋問の最後で、文先生が世界的な統一運動をもっと拡大していく為には、こんなにたくさんお金が必要だと、そういうふうなことに対して信者さん達が、それだったらもっといろんな献金をしてやっていこうと、そういうふうなことでの目標だったと思いますけれども。

乙ハ第二八号証の二 平成六年七月四日 ○○○○ 証人調書 一二四頁
そこに戻ってきて日本の幹部に会ったと。それでその日本の幹部にこう言ったと。要するに「君達は、この決意をしなければ先生・・・」、これは自分のことなんでしょうけどね。重大な儀式をやることは出来ない」と、この重大な儀式のことが安着式だと、こういう話しですね。
そうですね。
それで、「君達はこの決意をしなければならない」というのは、先程の八ページの終わりから三行目の「TVを絶対にやるという純粋な決意」というのと一緒ですね。・・・だから、要するにTVを絶対にやるという純粋な決意を条件として安着式があったというのは、日本の幹部がTVを絶対やると、そういう決意をしたから安着式ができたんだと、こういうことですよね。
そうですね、この流れはですね。

乙ハ第二八号証の二 平成六年七月四日 ○○○○ 証人調書 一二九頁
次に行きます。一〇ページの三行目からを見て下さい。「この決意の基準はね、お父様は喜ばれたんですよね。で、具体的指示を出されました。全店舗要員の二倍化せよとおっしゃったんですよ、二倍化しただけでは不可能だと、全壮婦総動員だと、二五〇日をね、全壮婦総動員でやれとおっしゃったんですよ。この二つをやれれば一番いいんだ、一番いい、でも、もし、これでもやれなければ、日本の学生は一年、全員休学してでもね、やれとおっしゃったんです。」と、こういうことを文鮮明さんはおっしゃったんですか。
ですから、その場に私はおりませんので、そういう話しを中央本部から聞いて話していると思います。

乙ハ第一七号証の二 平成五年一〇月四日 ○○○○ 証人調書 一〇二頁
まず原理研究会の全体の会長というのはだれが決めるのですか。
それは推薦されて決まる場合もありますし、また文先生からこういう人がどうかというふうに依頼があって、それを検討して決まる場合もございます。

乙ハ第一七号証の二 平成五年一〇月四日 ○○○○ 証人調書 一〇三頁
それから、文鮮明という人が名指しで指名するということもあるのですか。
そういう意向が伝わってくる場合もあります。

 右に引用した二つの証拠は原理研究会の会長に対する文鮮明の指示についてのものである。しかし、日本の統一協会の一組織(被告はそれを否定しているが)の責任者の選定に対する指示を文鮮明が行っていることの証拠であって、重要であると考える。

3 古田コマンダー
 連絡協議会の責任者は古田元男である。社長ともコマンダーともいわれている。文鮮明に直結した被告の責任者である。被告の会長は後記のとおり公然組織の代表に過ぎない。
 次のファミリーの論文は、連絡協議会設立前であるが、被告の機関誌に「経済」局長である古田が登場として、エバ国家としての日本の使命=経済活動の重要性を訴えているものである。

甲A第四号証 ファミリー(一九七八年一月号) 四一頁
局長 古田元男
 今年は、第三次七年路程四年目を迎えまして、時の過ぎ去ることにあせりを覚える新年です。特に、この三次路程に課せられた日本のエバ国家の使命が余りにも大きく、また、事実として、先生から絶対的信頼を受け期待の中になる我々でありますが故に、身震いする様な緊張感を覚えるわけです。特にエバ国家としての使命は、万物をいかに復帰し、天の前に供えてゆくか、原理的意味あいに於いても、すでに示されている様に重大です。その為により本質的伝道拡大が現段階では必須かと思われます。今や、成約時代の信仰は観念の世界で酔いしれることなく、事実ある結果をもたらして、実体として天の前に供物をなし、具体的にまず地上天国をなすという自覚がない限り、成約の信仰者とは言えないと思いますし、旧来の宗教と変わらず、神の国実現は遠いと思います。

甲第五三号証 ○○○○○尋問調書 二六六項
古田元男さんという方は聞いたことありますか。
はい、あります。
お見かけしたことはありますか。
はい、大きな集会で、壇上の姿を見たことがあります。
この方はどういうことをやってたかは聞いたことありますか。
ハッピーワールドの社長さんで、日本の統一協会の経済面の実質的な責任者だと聞かされていました。
古田コマンダーと言われていませんでしたか。
はい、そういうふうに呼んでいました。

甲A第三八号証 ○○○○陳述書(第二) 三頁
 古田コマンダーは知っております。古田社長とも言っておりました。統一協会の経済部門に責任をもつ人だと理解しています。入信して最初に古田社長のことを聞いた時、宗教団体なのにどうして社長と言うのだろうかと不思議に思ったことを覚えていますが、文鮮明氏の願いである地上天国実現のためには、お金が必要であり、今の日本の社会は経済大国と言われ、資本主義の国だから、日本でお金を集めるためには会社形態をとることが一番で、教会員全員にその意識が身につくようにということで、社長と敢えて呼んでいるのだろうと思いました。

4 ブロック長会議
 連絡協議会の意志伝達機関は全国のブロック長が集まるブロック長会議である。全国のブロック長は会議の後、担当地域において下部組織の代表者を集めた会議を開き、全国のブロック長会議で示された経済・伝道目標を下部組織に下ろす。下部組織でも同様な方法がとられ、最終的には各構成員一人一人が経済・伝道目標を持って、活動することになる。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 四八頁
このブロック長会議というのは定期的に開かれるんですか。
はい、月一回あります。
いつ頃。
大体月の五日前後です。
一日かけてやるんですか。
はい、もっと長い場合もあります。
そうすると、一日という場合には朝から夜まで。
はい、かなり長時間です。
どういう方が出席するんですか。
はい、ブロック長、まあブロックの代表ですね。あとブロックの中には専務と言ったり、その他の幹部がおりますが、二、三名、各ブロックから本社事業団とよく称されています先程出ていますハッピーワールド、美術世界、シービーあるいは呉服の会社等の代表者が出て来ております。それと心霊巡回師代表と、会計巡回師代表、これは心霊巡回師は桜井設雄さんの奥さん、それと会計巡回師の室長をしています小柳定夫さん、そして古田元男コマンダーです。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 五一頁
まず何をするんですか。
前月の実績報告、これは端的にでありますけれども、伝道の実績、何人伝道しいうこと、あるいは経済のノルマに対する達成金額と達成率を報告します。
これは各ブロック別に責任者が、例えば九州ブロックは何人で経済はこれだけだと、こうやって報告するんですか。
はい、そうです。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 五二頁
それから経済ですが、これはどういう形で報告されるんですか。
前の月の献金ノルマにあたる数字に対して幾ら売り上げたと、そして達成率が何パーセントだということを言います。
その場合幾ら売り上げたというときには、項目として先程来出ている絵画、シービー、呉服がありますね。そのほかどういう明細がありましたか。
健康展とかその他の常設展ではないようなものあるいはHGと言いまして、早く現金と言うんですけれども、借り入れですが、それによって補填した金額等々が述べられます。
SKは出て来ましたか。
出て来ました。
SKって何ですか。
信者献金です。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 五三頁
それを聞いていた古田さんが発言をすることはありますか。
あります。
どういう発言をするんですか。
達成率が悪かった場合には罵倒に近いような言葉が出ますし、またバランスよくそれぞれの部門で販売していないと、どこどこブロックは何々の販売が弱いというようなことを追及に近い形の言葉を言われました。
罵倒って、具体的にどう罵倒するんですか。
達成しない場合には何で達成しないんだと、信仰がたりないからだと、こういうような形であります。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 五五頁
さて、その次にどういうことがあるんですか。
その次には古田コマンダーが月の初めに韓国に渡りまして、文鮮明からいろいろな指示をもらってきます。それは御言葉と言いまして、内的な宗教的な指示と外的な献金のノルマに対する数字を聞いて来ます。それを発表します。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 五六頁
証人がブロック長会議に出た当時は、内的目標としてはどんなことが言われておりましたか。
中国を復帰するんだ、復帰伝道ということですけれども、中国を復帰するために中国に自動車会社をつくる、この自動車会社はパンダ自動車と称すると、そのため三〇〇億のお金が緊急に必要であるというような内容を語っていました。

甲A第二一号証 ○○○ 証人調書 五九頁
さて、経済目標として三〇〇億とこうなりますね。そうすると、その後それを達成するためにどういうブロック長会議では話しになるんですか。
各ブロックにノルマを振り分ける必要がありますので、各ブロック長がそれに対して自己申告の形で、何々ブロックは幾ら幾らやりますということで申告します。三〇〇億を越えるようになればよろしいのですが、信仰をもってもっと取り組むブロックはないのかというふうに古田コマンダーが言います。そして調整をしていきます。

乙ハ第二八号証の二 平成六年七月四日 ○○○○ 証人調書 三〇頁
ブロック長会議というのがありましたね。
はい。
これはどういったものですか。
ブロック長会議は、中央本部が主催して全国のブロック長が集まりまして、殆どお話を聞くことでしたね。
誰の話を聞くんですか。
中央本部に福良本部長という方がおられますが、中央本部の本部長さんのお話とかあるいは「コマンダー」とありますが、古田さんという方でしたが、文先生の元でいろんなお話を聞いてこられる、あるいは近況とかいろんなものをアルバムにして作ったりとかそんなふうなことをして、今は世界的な統一運動がこんなふうになっているとかそういうことをお伺いすると。

 北海道ブロックの責任者は○○○○であった。

甲第三九四号証 原告Tノート 六七頁
一九九一年三月六日 出発式
○○ブロック長 激励のみ言


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札幌青春を返せ訴訟・控訴審判決
 弁護士 郷路征記