札幌青春を返せ訴訟
弁護士 郷路征記

代理人最終陳述

この裁判で裁判所に期待されていることは次のとおりである。

連絡協議会が統一協会の非公然部分であることを解明して欲しい。

この点が、被告統一協会の最大の防御方法である。
そして、いままでの判決で連絡協議会に対する統一協会の監督責任が認められても、信者がやっていることで、信者の職業選択の自由であるなどと言い抜けている。

いままでの判決の到達水準は・広島高裁岡山支部・甲第446号証で
14頁→被控訴人の信者らによる一連の勧誘、教化行為あるいは経済活動は、被控訴人自らが指示していると推認してもやむを得ない状況があるといえなくもないが、というものである。

そこで、この点について明確なご判断を戴きたい。
ご判断を戴くために詳細な事実を記載した。最終準備書面の第一巻組織論がそれに当てられている。

8の大項目を挙げて、宗教団体性を主張した。
宗教行事を自足的に連絡協議会が行っているということが大きい論点である。
すなわち礼拝などを連絡協議会の組織で行っている。それを取り仕切っているのは連絡協議会の指導者である。
連絡協議会への献身も統一協会の統一原理が人々の目標とする個性完成のためである。89頁
経済活動も、検討すれば目に付くのは宗教性ばかりである。
連絡協議会とは何かという側面からも主張を展開している。
被告統一協会は連絡協議会の目的について統一運動を推進するための組織だという。
そして連絡協議会のおこなう統一運動は宗教、文化、政治、等広い活動分野を誇る。その中には経済活動もある。
そして、統一運動の目的は→地上天国の実現と愛の人格の完成→個性完成である。
そして、統一協会の教義→統一原理が、地上天国の実現と愛の人格の完成を目的としている。したがって、連絡協議会が目的としているところからも、統一協会そのものであることが明らかである。

第2は統一協会の行っている経済活動は、宗教法人法違反の公序良俗違反のものであることについてである
→この点について判例はとくにない。この訴訟で初めてその主張が出されているからである。
簡単に言えば、公益法人である宗教団体が、その信者を無償労働させて、税金を払わないで、毛皮や宝石や布団を売って儲けることが許されるのかと言うことである。

規模は極めて巨大である。
月100億の売上があった。→100億でも足りない
実際に月100億の売上があったことが二回もある。
暴利行為である。→壺は当初の値段は一個5000円程度。それを日本で5万円で売っていた。それを霊がある言うことにして50万円以上で売るようになった。有名な霊感商法である。
その方法では、壺などを売ってから組織に勧誘していた。

それが世論の批判で続けられなくなった。
そこで、組織に入れかから物品の販売や献金でお金をとる方法に切り替えた。それが壮婦(既婚婦人)に対する新規チケット→鑑定→VC(ビデオセンター)→心情解放献金と言うコースである。これは壺を売らない霊感商法なのである。そうでなければ、一人で3000万円などの献金が考えられるか?

統一協会の教義である統一原理では、全員が自己と社会の救済のために物売りをすることが必然である。教義の中核的行為が宗教法人法違反であるから統一協会は非公然部分を作らないわけにいかなかったのである。その非公然部分に、訴訟になってから、訴訟対策上、全国しあわせサークル連絡協議会という名前を付けたのである。

そのことを前提にして、本論、被告の責任を論ずる。
判例では、被告の責任は、その目的、手段、方法が社会的に相当であるかどうかによって判断される。

そして第3に、統一協会の勧誘目的について、きちんとした判断をして欲しい。
この点について、宗教団体への勧誘目的ではない。
広島高裁岡山支部の判決の優れている点はこの目的のところの認定であると思う。
判決は8頁以下で、統一協会の教義と被控訴人あるいは信者組織の経済活動という一節を新たに興して、地裁の認定に加えて高裁としての認定をしている。
そして、その認定においては、統一協会の教義として万物復帰の教えがあること、文鮮明が説教で経済活動の指示をしていること、世界のしあわせなどの商業組織が存在し、支持者が詐欺的で暴利的な霊感商法によって物品を販売してきたこと、そしてその利益のほとんどが統一協会にわたることを認定して、「しかしながら、宗教団体の行う行為が、専ら利益獲得などの不当な目的である場合」についてを、目的が不当となる場合の例としてあげている。
しかし、右の判決では統一協会への勧誘目的が、違法な経済活動に従事させるためであるとまでは認定していない。
そこで、本件では明確にその点についての認定をしていただきたい。
そのために、連絡協議会が統一協会であること、連絡協議会自体は経済活動を行うための組織で、その組織が経済活動によい影響を与えるからと勧誘活動をはじめたこと、すなわち連絡協議会は伝道をしているのだが、その勧誘目的について、小柳証人は、その経済活動を発展させるため、従事者を獲得するためと供述していること。
教育過程そのものからも、勧誘目的が経済活動への従事者を獲得するためであることは明らかであると言える。
勧誘の当初で統一協会であることを隠すことは不当だが、ライフトレーニングの最後で統一協会であると証す。
新生トレの前半で統一協会に加入させる。しかしそれで教育過程は終わらない。
実践トレの冒頭に公式七年路程の講義がある。これを聞かせて、実践させて、さらに厳しい活動→伝道機動隊・珍味マイクロに参加させて初めて教育が終わるのである。
だから、経済活動に従事する人でなければ誘わないのである。
骨肉腫の人について→霊人体を綺麗にしてやりたいと考えて、アベルに相談すると、今は戦士が必要なんだと言われて、勧誘を諦めさせる。→戦士とは摂理に役立つ時の人→経済活動ができる人のことなのである。

第4に勧誘方法の違法性についてである。この点がなんと言ってもこの訴訟の中心である。
統一協会の教育過程を全体として見ること(広島高裁岡山支部の判決21頁・奈良地裁97年4月16日判決)が大切である。
その理由の一つは、一連の教育過程が一つの目的、すなわち、公式七年路程を真理だと信じて、実践する人間を作り出すこと、に貫かれていると言うことである。その目的で、長期間わたる教化活動が慎重に順を追って行われている。
たしかに一人一人のある決定個別に観察すると、意思決定の歪曲度は高くなく、自由意志であると評価される可能性があるものもある。しかし、統一協会は一旦決定したら後戻りが難しいという人間の心理的特性を利用して、次のように決定を積み重ねさせて、その各段階の間に必要な教育をさせることによって、次の決定が無理ないものになるように工作を重ね、最後に自分が目的とする決定にまで至らせるのである。
統一協会に入るために重大な決定は、ビデオセンターの受講を決めること、ライフトレ・四ディズへの参加を決定すること、そして献身の決定をすることである。
その決定が積み重ねられていく結果、統一協会の商品を売ることが、買う人のすくうためであると信じて行動する人間が作られるのである。
普通の人が当初の段階で、そのような決定をするわけがない。しかし、統一協会の側は、当初からそのような決定をさせるつもりなのである。

最初の決定・ビデオセンターへの参加決定
やはり、統一協会であることも宗教団体であることも明らかにしないで勧誘することの不当性を挙げなければならない。
統一協会を自然に離脱するのは圧倒的にビデオセンターの段階なのである。
100名コース決定すると、再来四回目までに半分来なくなる。その理由は相談して、おかしなところではないかとかやめた方がいいと言われてやめるのである。
再来四回以降二ディズまでにその半分がやめるから、当初から見れば25名くらいになる。やめる理由は、自分の考え方に合わない・宗教ぽいなどである。
そして、二ディズ以降はやめる率が激減する。二ディズ参加者の70〜80lがライフトレーニングに参加してその後はほとんど9割程度が参加して、最終的にはコース決定に対して5lの献身者と10lの統一協会員が生まれる。
そのような状況なのであるから、宗教であること、統一協会であることは絶対に隠さなければならないことなのである。

ライフトレへの参加の決定。
ライフトレの最後でここが統一協会であることが証される。しかし、その段階では止めるひとはほとんどいない。やめないように教化をすすめるからである。そのことが全く知らされないで決定されるし、次の段階である四ディズでは献身の決意を求められることも知らされないで、メシアを明らかにするという「餌」を与えて、情緒を高揚させて、非暗示性を高めて決定を迫るのである。
それまでの教育の内容のなかで重要なのが、メシア論と歴史の同時性である→イエスキリストの処刑で絶望させて、いま再臨のメシアが地球上にいるのだと希有な幸運を強調して希望を与えるのである。

献身の決定
ライフトレーニングの新生の手順の講義で、メシアが生存している今という時期にあなたはどう生きるかという問題を提起する。生き方の転換を求めるのである。
そして四ディズのメシア論では自分が罪人であることを強調し、その後のお父さまの詩で神の愛・無償の愛を体現してる文鮮明を印象づけ、文鮮明による救済を受け入れさせるのである。

壮婦の場合歪められている決定の根拠は恐怖を与えられることによる。青年の場合もそれは底流にある。
恐怖を与えるための手段が、手相を見ること、姓名判断、家系図判断などで因縁を強調し、地獄を認識させ、子宮を汚した罪を自覚させることである。
ところが統一協会の行う姓名判断や家系図判断にはなんの根拠もない。
姓名判断は桑野式という方法でやっているというのだが、桑野式は画数と線を引くところだけで、引かれた因縁線の意味は統一協会が勝手に考えて作っているものである。
統一協会が作っているマニュアルにはいい因縁というのは一つものっていない。すべて悪い因縁ばかりである。
家系図判断については、マニュアルもなく、根拠もなにもない。

組織につなぎ止める技術。
統一協会にとっては、長期間にわたって講義を聞かせ続けなければならない。そうでなければ、統一協会員にはならない。まだ、統一原理が頭に浸透していない人を組織につなぎ止めるためには、技術が必要で、それが愛をかけること、情でがんじがらめにすることである。
それについて統一協会の証人は、テクニックではない。担当者の愛だと言う。
たしかに、信者達は、よこしまな意図など一切ないような真摯な態度で対象者に接近してくる。そのことが勧誘の成功のために大きな影響力を持っていることは事実である。
しかし、それは組織の頭部が抱いている目的→公式七年路程を実践させる、物売りをさせ、その人を搾取すると言うことだが→が、組織の末端の担当者には自覚されず、末端の担当者の意識ではそうではないようにされているという例なのである。
末端の担当者は「救いのため」と信じ込まされている。尽くして尽くして尽くし抜くことが自分の愛の人格をみがくための道だ信じされられている。その通りにやるのである。だから、騙すことができるのである。
講師についても影響力が大きい。講師の講義の力が持つ意味も大きいのだが、担当者の真摯な態度が、ゲストにこんないい人が言うのだから、一生懸命聞いてみようと姿勢を転換させる。前向きに講義に向かわせることになるのである。そのことによって、講義の浸透力が増大するのである。
だから、教化が難しい人は排除する。自我が強そうだとか、自分の価値観を持っていそうだとかそのような人は排除するのである。

神・サタン・霊について
統一協会は霊や霊界をリアルに感ずるようになる。306頁
人間はヴァーチャルなものをリアルに感ずる特性を持っている。そのような状態にされてしまうと恐怖が取れないであろう。
活動そのものが恐怖の源泉に転化する。サタンが妨害しようとしているからであるし、失敗したら地獄に落ちることになるからである。

思想の定着
一旦身につけさせた思想は定着させなければならない。それが、伝道機動隊であり、珍味マイクロなのである。
思想の維持強化が図られる。
情報の制限
外との接触がない。
ひどい忙しさ。
恐怖や罪の意識が常に生産されている。

それらの教化の結果二つのアイデンティティが作られる。
自分自身のアイデンティティと人工的に作られた統一協会のアイデンティティである。
その状況は、朝鮮戦争の時の洗脳と同じである。
普通のアメリカ人→洗脳→共産主義を信ずる人→普通のアメリカ人へ
普通の日本人→マインド・コントロール→統一原理を信ずる人→普通の日本人へ
同じ事である。違いはテクニックが洗練されていること、統一協会においては神とかサタンとか超自然的要素が重要な部分を占めているので、回復することが困難であることと、洗脳されたアメリカ人はアメリカの社会に「解放」されることによって、洗脳から解けたのであるが、統一協会の場合は超自然的要素による恐怖や組織的緊縛によって、組織内に心身共に拘束状態を続けているのである。

例えば、洗脳では日記を毎日書かせて提出させた。統一協会でも同じ。一貫性のルールの利用である。

統一協会の不法行為の重要なことは、人間が物事を判断する判断基準を人工的に作り替えられたと言うこと、結局別な人格が作られたと言うことが大切で、特別なのである。
だから、悲惨である。正しいと信じて組織に人を誘う。物を売る。国民に対する財産権の侵害は必然である。
ゲストに対してそうするのだから、自分がそうするのは当然である。
だから、毎月献金もするし、摂理で大変だからといわれると献金をするのである。その献金は被告の不法行為と相当因果関係にあるのは、被告の不法行為の結果が、違法に人の人格を変えること、判断基準を変えてしまうことにあるからである。

だから、個別の損害についても被告はその責任を負うのである。


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