札幌青春を返せ訴訟・最終準備書面
 弁護士 郷路征記

第四 因果関係論
 被告の、公式七年路程を信じて実践する人間を作り出すという、一貫した意志によって貫かれている一連の行為によって、原告らは違法にも公式七年路程を真理であると確信させられた。
 原告が右教義を信じた後、被告に様々な名目で支払った金銭はすべて、右の公式七年路程の教えによって原告らの判断基準が違法に入れ替えられた結果のものであって、それらはすべて被告の各行為と相当因果関係のある損害なのである。
 その各金銭給付行為を個別に分析することでは、被告の責任を明らかにすることはできない。その段階では、すでに原告らの判断基準の中枢に公式七年路程や万物復帰の意義と価値が存在する状態なのである。したがって、原告らに献金などを勧誘する被告の行為もそれだけを観察すれば特に違法とされるものではないのである。
 しかし、原告らが被告の要請などによって献金などを行ったのは、原告らも公式七年路程などが真理であると信じさせられたためであり、かつ、原告らかそのように信ずるに至ったのは被告による不法行為の結果なのであるから、被告の不法行為と原告の各献金などの間には相当因果関係が存在するのである。

第五 損害論

一 献金について

1 壮婦の心情解放献金
 壮婦の心情解放献金は、統一協会による霊感商法の代替策であったこと、統一協会にとって霊感商法に代わる収入源として位置づけられていたこと、金額はその当時その受講生が自由にすることができる金額の全額が目標とされること、この献金の獲得を目標にして、統一協会が組織的、スケジュール的に対象者へ教化を行っていること、その内容は詳述したとおりであること、そしてその結果、いまだ公式七年路程は教育されていないが、その前提となる万物復帰の意義と価値は真理として認識させられており、判断基準が違法に変更されているのである。
 したがって、その献金は、金額の多寡に関わらずすべて、公序良俗違反で無効であること或いは被告の不法行為によって原告に発生した損害と言うべきである。

2 青年の心情解放献金について
 青年の心情解放献金は、壮婦の場合と異なり、統一協会による霊感商法の代替策という側面はない。
 しかし、この献金は、対象者らを無一文にして被告にすがらざるを得ない心理的状態を作り出し、献身をさせていく目的もあって行われていることや、壮婦の心情解放献金で指摘したと同じであるから、公序良俗違反で無効であること或いは被告の不法行為によって原告に発生した損害なのである。

3 摂理献金
 最終準備書面公序良俗違反論で明確にしたとおり、被告に対する摂理のための献金は、被告の経済活動の一環であるから、当然、公序良俗違反で無効である。
 仮にしからざるとしても、公式七年路程や万物復帰の意義と価値を信じさせられた後の献金は前述のように被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。

4 月例献金等
 一度の金額は多くないが、これも統一協会の活動を支えるためのものであり、統一協会の活動は万物復帰を内容としている。その組織自体が、万物復帰の教義の存在の下では、公序良俗違反の存在、或いは公序良俗違反の経済活動を高度な蓋然性で押し進める組織であると評価することができる。実際にも、月例献金などが集められる聖日礼拝の場は経済活動を推進する場そのものなのである。そうすると、この献金も経済活動の一環として、公序良俗違反で無効である。
 仮にしからざるとしても、公式七年路程や万物復帰の意義と価値を信じさせられた後の献金は前述のように被告の不法行為と相当因果関係のある損害である。

二 研修費用について
 原告らが勧誘された被告の教育過程そのものがその目的やそこで行われる行為によって不法行為の場と言うことができるので、原告らが被告に支払った研修費用はすべて不法行為による損害である。

                                                以上


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