札幌青春を返せ訴訟 弁護士 郷路征記
組織的違法行為性を認定
統一教会に損害賠償命令 札幌地裁判決
統一教会(世界基督教統一神霊協会)の元信者が各地で同教会に損害賠償を求めている“青春を返せ訴訟”のうち、札幌地裁の判決が六月二十九日に言い渡され、佐藤陽一裁判長は被告の信者勧誘の目的、手段の不当性などを認め、統一教会に約二千九百五十万円の支払いを命じた。“青春を返せ訴訟”で原告勝訴の判決が出たのは広島高裁岡山支部判決(今年二月九日に最高裁で上告棄却、確定)に次いで二件目だが、統一教会側は控訴手続きに入ったことを明らかにした。
財産収奪労力搾取
勧誘目的の不当性示す
判決は統一教会が原告(北海道などに在住する元信者二十人)に対して行なった入信、献金などの勧誘は「財産の収奪と無償の労役の享受及び原告らと同種の被害者…の再生産という不当な目的に基づく」と断定。
ある段階まで統一教会の名前を秘匿し、宗教教義とは直接の関係のない不安を煽り立てるなど、手段においても「社会的に見て相当性があると認められる範囲を逸脱」していると論じた。
そして、これらのことは「原告らの信仰の自由等を侵害するおそれのある違法な行為」であるとし、原告側が示していた物的損害及び精神的損害の賠償九千二百万円の請求に対し、原告に約二千九百五十万円を支払うよう命ずる決定を下した。
さきの広島高裁岡山支部判決は、原告側が訴えたマインドコントロールの被害について、マインドコントロールは「説明概念ではあっても道具概念(=理論)としては認められない」と述べたうえで統一教会の信者獲得方法などは社会的正当性を欠くと認定した。
「客観的」に論証
今回の札幌地裁判決でも同教会の信者勧誘などに関し「組織的体系的目的的なプログラム」による不当な影響力の行使を指摘しつつ、判決理由のなかでマインドコントロール概念は用いていない。「マインドコントロール論」の理論的成否によらず、“布教される側の信仰の自由”に注目しながら「外形的客観的」論証を重ねて原告勝訴の判定を下したことが注目される。
原告側・郷路征記弁護士の話=宗教であることを秘匿して信仰を選択させた統一教会の行為を重大な過失と認めたこと、その信者勧誘の目的が財産収奪、労力搾取にあると初めて断定したこと等、画期的な内容の判決だ。目的の不当性の論証はしっかりした事実認定に基づいてあくまでも統一教会の問題としてなされており、他の宗教団体に波及するような問題ではないだろう。
世界基督教統一神霊協会広報部の話=今回のような偏見に基づいた不当な判決が下されたことは誠に遺憾である。その内容は現信者の信仰心を踏みにじり、当法人の名誉を著しく冒涜するものといわざるを得ず、ただちに控訴したい。
[中外日報 2001年7月3日(火)]