統一教会訴訟
教会に慰謝料などの支払い命じる判決 札幌地裁
マインドコントロールによる勧誘で入信させられ信教の自由を侵害されたとして、 北海道内や首都圏在住の元信者ら20人が世界基督教統一神霊協会(統一教会)など 2者に慰謝料など総額9157万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、札幌地 裁で言い渡された。佐藤陽一裁判長は「勧誘は財産の収奪と無償の労役提供という不 当な目的で組織的・体系的に行われ、信仰の自由を侵害する恐れのある違法な行為が あった」として、同教会に2952万円の支払いを命じた。
判決に先立ち、佐藤裁判長は「初提訴から14年が経過しており、これだけの審理 期間がかかったことに対し職責をまっとうしていないとの批判を甘受しなければなら ない」と、陳謝する旨の異例のコメントをした。
判決などによると、原告はいずれも女性で、85〜90年に道内で入信。脱会する までの間、ビデオや合宿による研修で、同教会の教理について講義を受けたり、献金 などを行った。また、「トレーニング」や「献身」として、信者の勧誘活動や食品の 訪問販売、宝石、呉服のセールスなどの経済活動に従事した。
原告は(1)統一教会とは知らされずに勧誘を受け、意思に反して思想・価値観を 教え込まれた(2)学業や職業の放棄を余儀なくされ、貴重な青春時代の一時期を奪 われた(3)献金や物品の購入を強要され、多額の経済的負担をさせられた――と主 張。1人当たり200万〜300万円の慰謝料の支払いと、研修や献金など入信にか かった費用、印鑑と数珠の購入代金の返還を求め、87年から92年にかけて4次に わたり提訴していた。
判決後、原告側代理人の郷路征記弁護士は「判決は宗教活動の違法性について、こ ちらの主張よりも踏み込んだ判断をしており、大変評価できる」と語った。
同様の裁判は「青春を返せ訴訟」として、札幌のほか、全国7地裁・支部で起こさ れ、現在、4件が係争中(控訴審を含む)。最高裁は今年2月、岡山市の男性が提訴 していたケースで、「宗教選択の自由を奪って入信させた」とした広島高裁岡山支部 の判決を支持し、元信者の勝訴が確定している。
統一教会広報部は「偏見に基づいた不当な判決で、現信者らに対する冒とくと言わ ざるを得ない。直ちに控訴したい」とコメントした。
【西元健一郎】
[毎日新聞 2001年6月29日 夕刊]