1 総括的評価
  原審判決をその内容においても維持し、統一協会の原判決批判に答える形で、統一協会の布教活動について地裁判決よりもより明確な評価を示した判決である。控訴審裁判所としての期待に応える判決である。

2 内容的評価
 連絡協議会の存在自体が疑わしいという評価は、地裁判決と同じであるが、統一協会の会員として統一協会が主張する52万人が「公式7年路程」により経済活動などを義務づけられていることを認定していること、および統一協会のこの点についての反論を明確に一つ一つ厳しい言葉で排斥していることなどから、公式7年路程を実践している連絡協議会が統一協会とは別な団体として存在していることについて、限りなく否定的であると考えられる。

 統一協会が伝道の際に統一協会であることを秘匿することに関して、地裁判決より厳しい判断を示した。そもそも伝道が善なるものであれば、その教義などを秘匿すべき合理的かつ十分な理由はないし、偏見があるからといって教義や主体を秘匿することを正当化することにはならないと明確に述べている。

 受講生や統一協会員が勧誘の過程で統一協会に与えた「同意」は自由な意志決定を妨げられた結果に過ぎないと断定した。このことにより、統一協会の今までのやり方による勧誘はすべて明確に違法とされた事になる。従ってこの点は地裁判決の認定よりはるかに進んでいる重要な点である。被勧誘者の自由な意志決定が妨げられたのは、被勧誘者と外部との接触を困難にさせ、正常な判断ができないような状況を作出して、教義に傾注させ、これを断ち切りがたい状態にまで強めたからであると判断した。正常な判断ができないような状況を作出して、それが宗教の教義ではなく、宗教や科学を超えた普遍的真理であるなどと述べて、勧誘などをすることが許されないことは当然であるとした。

 被控訴人らが献金などの出捐をしたのは、自由な意志決定を妨げられた結果であり、統一協会が財産を収受することを正当化することはできないとした。従って、統一協会の今までのやり方による献金もすべて違法とされることになる。

 たしかに、末端の勧誘者は被勧誘者を騙したとは言えないが(信じているのだから)、それはその人達が財産の収奪と無償の労役提供の対象者とされた被勧誘者の以前の被害者だからである。したがって、このことが統一協会の責任を否定する理由にはならないとした。

3 今後について
 札幌地裁判決は統一協会に関わるすべての訴訟について、被害者の救済を認める流れを作りだした。その後の東京、新潟、京都の判決にその事は反映されている。
 今回の札幌高裁の判決は、現在大阪高裁に継続している神戸地裁の事件(原告敗訴)と東京高裁に継続している東京、新潟の各事件に大きな影響を及ぼすであろう。
 札幌高裁判決は、札幌地裁判決が作りだした流れを確実なものとし、かつその後の2高裁判決が統一協会の敗訴となる道をも切り開いたものと考えられ、統一協会の違法行為に法的に明確な決着がつけられることが、遠くないことを示したものと言える。

4 その他
 なお、統一協会側代理人は、札幌高裁判決にしたがって損害賠償金を被害者らに直ちに支払うことを表明した。



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青春を返せ訴訟控訴審判決について
平成15年3月14日
弁護士 郷  路  征  記