判決に向けて

〜青春を返せ訴訟第2陣2次訴訟(以下、「2次訴訟」といいます。)は平成24年3月29日13時15分判決

札幌弁護士会所属 弁護士 郷路征記


 平成16年6月に提訴した2次訴訟は7年6ヶ月の審理の末、平成23年12月22日に結審しました。札幌地方裁判所民事3部の橋詰裁判長は、判決言い渡し期日を平成24年3月29日13時15分に指定しました。

この裁判で原告らが求めていることは、
1. 統一協会の布教活動が対象者の思想信条の自由を侵害する憲法違反の行為であること。
2. ビデオセンターから始まる布教活動や物品販売活動を行っているのが「信徒会」という任意団体ではなく、統一協会そのものであること。
3. 献金だけではなく、着物や宝石など物品を購入したことも損害となること。
4. 献身をさせられて統一協会の事業に専従させられたことが損害となり、平均賃金相当の逸失利益の賠償を求めることができること。
5. 慰藉料は高額であるべきこと。

 等々です。
 その中でも特に重要なのは統一協会の布教活動=入教勧誘行為が、国民に対して憲法違反の行為であるという点です。統一協会は本人が自発的に選択したものだから、そもそも不法行為にもならないと主張しています。
 平成13年6月の青春を返せ訴訟の判決では、統一協会がその勧誘の当初、正体を隠していることを問題視し、それが対象者の思想信条の自由を侵害するおそれのある行為であったと述べていますが、統一協会の布教活動全体について「信仰の自由を侵害する行為である。」とは認定していません。
 原告側は統一協会の布教課程の分析を、『統一協会マインドコントロールのすべて』で解明したことを土台に更に進めました。統一協会が対象者を統一協会員にする過程で求める最も重要なことは、文鮮明をメシア(救世主)として受け入れさせることです。その結果、対象者は、文鮮明の説く公式7年路程(救い=合同結婚のためには3年半の物売りと3年半の伝道をしなければならないという教義)を真理と信じて、そのような実践を行う人間になっていくからです。
 文鮮明をメシアと受け入れさせるために、統一協会は次のような「手」を使います。即ち、人間は罪意識を持つと救いを求める存在であること、救いを求める気持は、理性を乗り越える強さを持った望み、渇望であることを悪用するという方法です。
 統一協会は対象者に罪の意識を持たせるために、戦前日本が朝鮮半島で行った残虐行為を映像を使って克明に教え、イエス・キリストがゴルゴダの丘で処刑される際の、手のひらに五寸釘が打たれる様子を詳細に講義して、イエスによる救いが失敗したのは人間の不信によるものであって、結局人間の罪であることを強調し、結婚前に性的な関係を持つことが罪であると教える(堕落論がそのような話になっている。しかし聖書創世記によれば、アダムとエバは神の戒めに反して「取って食べたとき」には、既に夫婦だったので、統一原理はその前提そのものが全く間違っているのですが)こと、その他様々な方法で罪意識を植え付け、それを拡大し、救いを求める心情を燃え上がらせて、文鮮明をメシアとして受け入れさせるのです。
 最終準備書面においては認知的不協和の理論に基づいて統一協会の入教課程を分析しました。認知的不協和の理論というのは単純化して言えば、人間の人格の三要素である知・情・意はバランスがとれているものであり、そのひとつの要素が変わると他の要素も変わるように圧力がかかるというものです。例えば、喫煙が体に悪いと知(認識)が変化した場合、禁煙すべきだと行動(意)に圧力がかかります。禁煙できない自分をダメな奴と考えるように感情も変化します。ですから、認識が変われば行動も変わるのです。統一協会はこの理論を使って、人間の人格を変えていきます。その内容を詳しく分析しました。
 ビデオセンターを使った伝道活動や物品販売活動は統一協会がやっていることであって、信徒会は存在もしないということについては、統一協会での活動中に作成した原告等のノートを詳細に分析することによって、文鮮明の指示が日本統一協会の会長の指示となり、それが北海道教区等の教区長の指示となり、各支部など末端の統一協会員に目標としておろされて、実践をされていくという過程を明らかにすることができました。
 以上のような原告側の主張に対して、裁判所が如何なる判断をするか判決の内容が注目されます。


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